*

impulse housing net

UPDATE: '04.01.07

住宅の長寿命化「百年持つ根拠は何ですか?」
 〜 ユーザーの素朴な質問に適切に答えられなければ生き残れない 〜

 ここ数年来の傾向であるが、住宅不況が続くなかでユーザーの住宅取得に対する意識が大きく変わってきている。住宅ニーズは大きく2分化され第1次取得者が求める規格型のローコスト住宅と建て替え層が求める“こだわり”の中・高級住宅とに分かれた。

 意識が変わってきているのは、中・高級住宅の分野である。この分野は供給側にとって付加価値が高く魅力的な市場であるが、ニーズを把握しきれず、何度プレゼンテーションを繰り返しても満足してもらえないと嘆く業者も多い。

 そこで、ユーザーの“こだわり”を集約化してある種の平均像を導き出すのではなく、時代の流れのなかで、ユーザーが住まいづくりを通じて自分の生活スタイルをどのように表現したいのかを考えてみた。

★問われる長寿命化住宅の根拠

 住宅のストック化が叫ばれるようになり、わが国の住宅は、先進諸国の住宅に比べて寿命が短いと指摘されている。日本の住宅の平均耐用年数は26年、アメリカ44年、イギリス75年と確かに大きな差が出ている。
 日本の住宅の寿命がどうしてこれほど短いのかについては、いろいろな理由があげられるが、最も大きな要因は住まい手のライフステージの変化に住宅が対応できないことである。

 ご承知のとおり、アメリカ人はライフステージの変化やグレードアップを図るときに、これまで住んでいた住宅を売って、自分たちの要望に添った中古住宅や新築住宅を購入する。つまり、住み替えによって住まい方の変化に対応させている。
 こうしたアメリカの住まい文化に対して、日本人はあまり住み替えを好まない。 住み慣れた土地に愛着を感じてしまうからだろう。
 したがって、日本人はいちどある土地に落ち着いてしまうと、よほど大きな外的要因でもなければ、その土地を終の棲家にする傾向が強い。最初の建て主が人生を全うするまでそこに住み、その後子供や孫が相続して住み続けるというのが一般的である。

 そうした住まい感を持っているにも関わらず、戦後建てられたわが国の住宅は長期間にわたって住み継がれる展望のもとに建設されてこなかったことが、先進諸国に比べて住宅の寿命が短いということになってしまったわけだ。
 長期間にわたる時代の流れやライフサイクルの変化に住宅が付いていけないために、耐用年数的にまだ使えても新しく建て替えることになる。子供ができて狭くなった、大型家電製品なりマイカーを購入したためスペースを拡大したい、子世帯と同居するため二世帯住宅にしたい、子供が独立して巣立ったため老夫婦二人では管理が大変だ、などなど住まいに対する不満をあげればキリがない。こうした理由から建て替えてしまう。

 しかし、これから家を建てようというユーザーは意識が違う。住宅供給側が耐用年数の長期化を強調して「100年持つ住宅」を強調していることもあり、ユーザーの期待は大きく、プレゼン段階で様々な質問が飛び交っている。
・100年持つという根拠は何なのか。
・ライフステージの変化に、どう対応できるのか。
・メンテナンスはどれくらいの周期で行わなければならないのか。その費用はいくらくらいになるのか。
・耐用年数50年とか70年でいい場合は、どれくらい安くなるのか。
・100年たっても飽きのこない外観デザインはどのようなものがいいか。
 ――などなど、どれも素朴な質問だけに、本質を突いている。

★将来を見通した賢い選択に慎重

 「100年持つ住宅」を丈夫で長持ちという意味のセールストークであるなら、すぐに見限られてしまうほど、最近のユーザーは真剣であり、シビアな要求を供給者側に求めてくる。
 特に性能表示制度が登場し、客観的な性能で提示されることを知ったユーザーは、納得いくまで質問をしてくるという。その背景には、21世紀に入ったこの先もスクラップアンドビルドを繰り返すことは許されなくなってきたことを認識しはじめているからでもある。

 まず、寿命の短い家は木材をはじめとした資源の無駄遣いである。また、解体された古い家は産業廃棄物となりその処理にも多大な費用がかかるといった環境問題にも敏感である。
 さらに、長期間にわたっての個人的な負担も真剣に考えている。従来のように住宅の平均寿命が27年ということであれば、住宅ローンが終わる頃に建て替えるということになる。これでは、建て主本人がその家に暮らすのが精一杯で、子世代にまで継続させることができない。そうなると、子供が相続しても建て替えることになるため、親と同じように住宅ローンを組み、親と同じようにローン負担に喘がなければならない。

 もし、親の建てた家をリニューアルして住むことが可能であれば、負担ははるかに軽くなる。住宅ローンに向けられるべき資金を、相続した本人や子供の教育、高齢化した親の介護費用、家族旅行、レジャー、ボランティア活動などに回すことができる。そうなればもっと人生が豊かなものになり、日本経済の活性化にもつながるはずだ、という人生観を描く人が増えている。

 不況がもたらしたデフレ経済、少子高齢化社会、いまや破綻が懸念される年金問題など社会的な不安が募るだけに、ユーザーは人生最大の買い物といわれる住宅に対して、賢い選択をしなければならないと、慎重である。
 住宅供給サイドは、慎重なユーザーと対峙して説得できるだけのコンサルティング能力とプレゼンティーションを行わなければ、生き残れない時代に入っている。