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UPDATE: '04.07.19

“ユーザーが主役”時代の商品開発
 〜 積水ハウスと積水化学工業の新商品を分析してみた 〜

 ハウスメーカーが開発する新商品は従来、時流を先取りしたコンセプトを打ち出し、斬新なデザインを提案するのが常であった。その姿勢はいまでも変わらないのであるが、ここにきて、その提案力に訴求力がなくなってきているように思う。その原因はメーカーの提案とユーザーのニーズにギャップが生じてきているからである。

 つまり、メーカーの提案がユーザーのマイホームに対する憧れを具現化しづらくなってきていることと、ユーザー側の住まい方に対するこだわりが強くなった、ということである。それは、他の消費物と同様に住宅も“ユーザーが主役”の時代に入っていることを意味している。  こうしたなか、大手プレハブメーカーの積水ハウスと積水化学工業がこの春に投入した新商品を分析してみた。

◎コンサルティング営業を充実、オーダーメイド感を強調

 まず、積水ハウスであるが「次世代のプレハブ住宅システムを提案」と販売システムを大きく見直す戦略を打ち出した。同社のマーケティング調査によると、プレハブ住宅のイメージは自由度の少ない規格型と捉えられ、自由設計のオーダーメイドは難しいと思われていると分析、そうしたイメージを払拭するためにユーザーの要望を採り入れた、手づくり感のある販売手法を前面に出す方針である。

 具体的には、これまでの軽量鉄骨2階建て主力商品の「セントレージ・シリーズ」を再編・進化させて「Bee free」として「コンサルティング営業」に力を入れてオーダーメイド感を強調する。

 同社の住まいづくりに対する基本姿勢は、@高く安定した性能、品質、長期保証、万全のアフターメンテナンス体制A幅広いニーズに対応できるデザインと空間設計のための商品システム、豊富なアイテム群の整備Bユーザー一人ひとりの対話と信頼関係によって、ニーズを汲み取り、夢をカタチにし、提案していくコンサルティング体制――の3要素が不可欠であるとしている。

 「Bee free」はA番目の条件を充実させたシステムと位置づけており、これまでの商品毎に展開してきた部材運用の「壁」を取り払った、デザインと設計の自由度を向上させたとしている。
 屋上利用のプランや半戸外空間・コート空間をつくる「ロジア」などのあるプランも自由に設定できるようにした。「軒スライドシステム」や「葺きおろしユニット」なども用意し、柔軟な敷地対応を可能にした。

 また、大幅に部材の共通化と再編を進めたことにより、設計、生産、施工の合理化も推進できる。「Bee free」自体が完成されたものではなく、ニーズと現場第一線の声を反映させ、テイストを表現する部材や共通の部材をニーズに合わせて順次バージョンアップし、毎年進化、成長するシステムとしている。

 同社では特に「コンサルティング営業」体制を強化させていくとしており、全国の設計社員がセンスを競い合うようなユニークな“設計道場”という研修に力を入れるなど、住まいづくりのアドバイザー・デザイナーとしての営業や設計社員の技能を高める能力開発体系の充実を図っている。

 また、プランニングからCGによるイメージ展開などのプレゼンテーションまでを一貫して行えるオリジナルシステム、IT活用を含めた営業提案支援システムも充実させるなど、簡易に概算費用がわかる「予算計画システム」なども積極的に導入していく。

 価格体系については、グレードの幅を大きく拡大し、高い付加価値のある仕様を適正価格で実現し、ユーザーへの満足感とリーズナブル感の提供を目指している。初回提案時にイメージを把握してもらうため「エントリー仕様」を設け、ユーザーのこだわりにあわせ、内外装、設備ごとに、よりグレードの高い「エクセレントカスタム」アイテムから、コストパフォーマンスを追求した「エコノミーカスタム」アイテムまで幅広い選択肢から個別にコーディネーションできるようにしている。

 価格は3.3u当たり47万〜80万円、1棟価格2000万〜6000万円(消費税込み) となっている。

◎光熱費ゼロ住宅を目指す。約16年で初期投資を回収

 積水化学工業の新商品、新光熱費ゼロ住宅「パルフェAE」の基本コンセプトは明確で「地球環境にやさしく、60年以上安心して快適に住み続けることのできる住まい」である。同社は以前から太陽光発電システムを搭載した光熱費ゼロ住宅を供給しているが、それを徹底したのが今回の新商品である。

 「パルフェAE」は外壁に厚さ14mmの磁器タイルを採用して重量感とライフサイクルコストの軽減を実現。エネルギー消費量の大きい「冬と夏の暮らし」に着目して開発したとしている。

 もう少し詳しく開発コンセプトをみておこう。年々住宅は快適で便利なものになっているが、快適さが増すにつれてエネルギー消費量が拡大する傾向にある。
特に冷暖房に関しては顕著であり、例えばヨーロッパの国々は日本の数倍(気候条件が日本に近いイタリアでさえ約3倍)冷暖房用エネルギーを消費している。

 「快適さを追求しながら省エネルギーを実現する」ことが今後の住宅開発の重要テーマである。「パルフェAE」は「快適性、環境、経済性の両立」という「光熱費ゼロ住宅」をめざし、「冬の暮らし」と「夏の暮らし」に着目した――としている。

 新光熱費ゼロ仕様は、昼間時使用量を超える太陽光発電を行い「昼間の電力売電金額≧電力購入金額」となるように設計。

1.次世代省エネ基準V地区対応の「Q値2.24」の高気密・高断熱な構造躯体
 壁に細繊維グラスウール13kg/m3、厚さ100mm、天井にはグラスウール10kg/m3、厚さ140mm、床下の基礎断熱でしっかりと包み、窓にはアルミ樹脂複合サッシを採用。次世代省エネ基準V地区(東北地方南部、長野県)対応のQ値2.24の高気密・高断熱の躯体によりエネルギー消費量と光熱費を軽減する。

2.大容量で高効率な太陽光発電システム
 発電出力200Wの単結晶セル太陽光発電システムを搭載。単結晶タイプは発電効率が高いため、少ない面積で大容量の発電が可能である。太陽光発電システム搭載部分を除く屋根は、天窓や屋根バルコニーなど様々な利用が可能である。

3.高効率給湯器「エコキュート」
 「エコキュート」は外気の熱を活用する発熱効率の高い給湯器である。通常の燃焼式の給湯器に比べ、二酸化炭素排出量は約1/5、光熱費は約1/2となっている。

4.経済的な深夜電力利用のオール電化仕様
 深夜電力は昼間の約1/3の価格である。太陽光発電システムにより価格の高い昼間は売電、安い深夜は電力購入となるため非常に経済的である。また、オール電化仕様は住居内で火を使わないため、安全で空気の汚れも少ない。

 「パルフェAE」は「光熱費ゼロ」仕様とメンテナンス費の少ない「新タイル外壁」「ステンレス屋根」「アルミ庇」を採用したことで、太陽光発電システムやエコキュートを設置しない塗装外壁、セメント瓦の住宅に比べ60年間で約1600万円ライフサイクルコストが軽減できる。

 また、光熱費ゼロ仕様、高耐久・快適使用の導入により初期コストは約500万円アップするが、年間の光熱費、メンテナンス費の軽減(約32万円/年)により、約16年で初期投資分が回収できる。

 このほか、起風天窓、スリット付通風シャッター、欄窓・地窓、遮熱スクリーンなどパッシブ手法の快適性を追求している。価格は3.3uあたり63万円台から。
 太陽光発電システムの発電容量を基準に金利設定した、店頭金利より低金利の長期固定型住宅ローンを住友信託銀行と共同開発もしている。

◎暮らし方把握できないユーザー、当面、新商品は影響力を持つ

 最近発表された2製品を紹介したが、ここで多くのハウスメーカーから発表される新商品が、今後どのようなかたちで変化していくのかを考えてみたい。

 これまでに何度か言ってきていることであるが、住宅の新商品は車や家電製品と違って完成品を製造し販売するというものではない。これからマイホームを求める人への提案である。つまり、「こういうコンセプトで住まいづくりを進めていくので、いかがですか」という提案を新商品と呼んでいるのである。

 そのため、ハウスメーカーにとって、生産したが売れなかった、といった家電メーカーのようなリスクは少ないといえる。提案にかけたエネルギーと広告宣伝費、営業経費などが宙に浮いてしまうだけである。

 これらのリスクもなくするためには、新製品など提案しないで、個々のユーザーの要望を聞いて、その要望を満たした住まいづくりに専念できれば、もっと経営効率がよくなることは間違いない。その前に、どのような要望にも応えられる技術力と設計力を身につけていればならないのであるが・・・

 こうした姿勢はゼネコンと同じである。ゼネコンはマンションやビル建築などを請け負うが、新しいマンションを新商品などと提案しないのと同じである。発注者の要望を採り入れた個々の要望に対してのみ提案と費用を提示して、競合他社と争う。

 おそらく、ハウスメーカーもそうした形態が望ましいと思っているだろう。問題はなぜそれができないかということである。

 それは、マンションと戸建て住宅とではユーザーの住まいに対する認識が違っているからだろう。わが国のユーザーは、オーダーメイドで家を建てるということにまだ馴れていないことが大きいように思う。自分がどのような生活をしたいのか、またどのような暮らし方を望んでいるのか、こうした基本的なことを明確に把握しきれていないからである。

 快適性や安全性を重視した合理的で機能的な住まいを求める一方で、昔からある家としての格式や見栄も求めている。親戚や知人から“さすが、立派な家ですね”といわれたいのである。

 こうした内面的な矛盾を抱えているために、住宅総合展示場に出向いて、モデルハウスをみることでそのへんのことを調整をしているといってもいいだろう。

モデルハウスはイメージリーダーとして建てられているので、どれも立派である。 展示場は“ベンツをみせてカローラを売る”と揶揄されることもあるが、ユーザーは憧れとしての格式と見栄をみているので、それはそれでいいのである。

 しかし、モデルハウスのような住宅が建てられる敷地と予算があるユーザーは別として、一般庶民が住宅ローンを組んで建てる住宅は誰もが想像がつくように、モデルハウスに比べれば、それほどたいしたものではない。そのたいしたこともない住宅に機能性や格式、見栄を盛り込むものだから、結果的に矛盾が露呈して中途半端なものになり、車はピカピカに磨くが、住宅の方はほとんど手入れやメンテナンスをしないことになってしまう。つまり、愛着が湧かないのである。

 これは、まだユーザーが他人の目や昔からの慣習といったものに拘束されて、自分がどのような暮らし方をしたいのかをマイホームという器に実現させていないからである。もし、合理性を最優先させるというユーザーがいたとして、「ウチは共働きで外食が多い」となれば高価なシステムキッチほど非合理的なものはない。ましてや高価なシステムキッチンが汚れないようにと、天ぷらや焼き肉を作らないなどとなれば、滅多に来ない客に見栄を張るためのものでしかない。

 話が少し極端な方向に流れてしまったが、多くのユーザーが自分の暮らし方を自分流にカタチにしたいという認識が確立されるまでの間、ハウスメーカーの新商品は影響力を持つであろうし、営業戦略としても有効に働くだろう。

 こだわりのユーザーが増えたことで、新商品という提案も多岐にわたり、開発に苦労することになるが、それも時代の流れである。