2×4協会が「耐火構造認定」を取得
〜 木造耐火建築物として中層のマンションや商業施設も可能 〜
(社)日本ツーバイフォー建築協会が、ツーバイフォー工法による 「耐火構造認定」を国土交通大臣から取得したことは、すでにご承知の方も多いだろう。これにより、これま で防火地域にあっては鉄筋コンクリート造が“常識”であった分野に木造の建築 物が進出できる道を開いた。
同協会では、木造耐火建築物の認定を取得したことで、防火地域で100uを超 える超える住宅建設が可能になるほか、地域にかかわらず4階建ての住宅や共同 住宅が可能になった、さらに3階建て以上の商業施設や病院、ホテルなどの特殊 建築物や建築基準法以外に耐火建築物の制限がかかる高齢者向け施設や幼稚園、 保育所などの非住宅についても建設が可能になった、と新たな市場開拓に意欲を 燃やしている。
わが国の木造の歴史を振り返ると、関東大震災や戦災による市街地での大火災
による教訓から、長年にわたって防火地域、商業地域での木造を排斥してきた経
緯がある。この傾向は近年まで継続されてきた。
こうしたなか、同協会は木造であってもしかるべき科学的な根拠に基づいた防
火対策を施せば、耐火建築物になるという努力を続けてきた成果が、今回の認定
といえる。
そこで、これまでの経緯を含めて木造耐火建築物の可能性をまとめてみたい。
■“木は燃える”の常識を覆す。実大火災実験の成果を集大成
ツーバイフォー工法は、オープン化以来30年、常に木造の可能性を追求してき た工法であるといっていいだろう。これまでに通算4回の実大火災実験が行われ、 防火性能を確認することで木造による3階建の戸建て住宅や共同住宅の建設を可 能にしてきた。こうした実大住宅による火災実験は、世界的にもあまり例のない 実験であり、木造による大型建築物を可能にしたいというツーバイフォー関係者 の執念でもあった。
かつて、わが国は旅館、学校といった相当大きな建物も木造で建設してきたの
であるが、先に触れた関東大震災と戦災による大火災で手痛い経験をしているだ
けに、木造の耐火性に対して非常に神経質になっていた。
しかし、こうした一連の実大火災実験によってツーバイフォー住宅がコンクリ
ート造並の耐火性を有していることを実証。社会的な安心と信頼を勝ち得たこと
は、木の文化を再興し復活させる意味でも重要なことであった。
ツーバイフォー工法は、常に進化し続ける工法であり、“進化”というのは新
しい時代を切り開くことへのチャレンジであり、人に勇気と希望を与える。
特に、工法というのは基本となる技術である。そうした意味で基本技術をベー
スに、デザインや使い勝手を時代に合わせてアレンジさせていくものとは一線を
画する。工法が進化するということは、応用範囲を限りなく拡大させる可能性を
秘めているからだ。
さて、今回認定を取得したツーバイフォー工法による「木造耐火建築物」の可
能性についてみていこう。
防火地域に建設される建物や4階建て以上の共同住宅、商業施設、ホテルなど
の特殊建築物は、建築基準法で耐火構造でなければならないという規定がある。
耐火構造というのはどのようなものかというと、火災が発生して鎮火するまで、
その建物が倒れたり崩れ落ちたりしないこと、また近隣の建物に延焼させないこ
と、となっている。
これは当然のことである。防火地域や商業施設には大勢の人が集まるわけで、
火災による被害を拡大させないためにも、こうした措置をとらなければ危険な都
市になってしまうからだ。
そこで、耐火構造の建物を建設するのあたって、どのような材料を用いれば火
災が発生しても崩れ落ちたり、延焼防止できるのか。専門的にはいろいろな対応
策があるが、一般的にすぐに思い浮かぶのはコンクリート造である。
そこに、「木造でも可能だ」という人が現れたらどのような反応が返ってくる
だろうか。専門家は別として多くの人は「?」であろう。“木は燃える”という
常識からすると信じられないことかもしれないが、木造でも可能なのだ。
そのことを実証するために同協会は、研究開発プロジェクトに参加するなどの
努力を重ねてきている。進化を求めてのチャレンジである。
その経緯をみておこう。まず、契機となったのは2000(平成12)年6月に大改
正された建築基準法の性能規定化が施行されたことである。
この性能規定化により、従来の建築材料や構造方法などの仕様的な制限から開
放された。つまり、耐火建築物を建設するにあたっては、こうした建築材料を使
い、こうした構造にしなければならないという規制をなくしたのである。そのか
わりに耐火建築物に求められる性能が提示され、この性能をクリアするならどの
ような建築材料、構造を採用してもよいということになったのである。
そこで、同協会では当然ながらツーバイフォー工法によってわが国初の木造耐
火建築物を目指すことになった。2003(平成15)年の春から外壁、間仕切壁、床、
屋根、階段について認定取得の努力を続け、このほど国土交通大臣から木造建築
物としては初の「耐火構造性能認定」を取得したというわけである。
その結果、
これまで防火地域であることから、規制されていたツーバイフォー工法の建物も
この地域に建設することが可能となった。さらに、ツーバイフォー工法にとって
画期的なことは、3階建て以上の商業施設や4階建て以上の共同住宅も建設でき
るようになるということである。
ツーバイフォー工法による中層建築物は、アメリカ、カナダでは一般的なこと であるが、日本でこれを実現させるには高いハードルがあった。それは、これま でに何度も触れてきている耐火性能の問題がネックになっていたからである。近 々、この問題もクリアされ、日本の都市に4階建て以上のツーバイフォー工法に よるマンション、ホテル、商業施設などが出現することになるだろう。
■期待高まる新しい市場の開拓、高齢者施設、幼稚園なども可能
木造耐火建築物(現状では、木造軸組工法やプレハブ工法は認定取得のための
作業を行っていないのでツーバイフォー工法ということになる)が防火地域に建
設される意義には大きなものがある。
まず、ツーバイフォー工法関係者にとって新しいマーケットを開拓することが
できるということである。この分野は工法的にみるならRC造や重量鉄骨造が独
壇場ともいえるシェアを有してきたが、この一画に参入できるようになる。
都市部でツーバイフォー住宅を供給している工務店にとって、新たにRC造な
どを導入しなくても、現状の体制を強化する程度で市街地の住宅、商業施設需要
などに応えることができるメリットは大きい。
また、ツーバイフォー工法はオープン工法なので、この分野に進出したいと考
えている他工法を手掛けている工務店にとっても、ツーバイフォー工法を導入す
ることで容易に進出することが可能になる。
木造耐火建築物の実現によって、まず新規需要として考えられるのが、防火地
域での規制を解かれた、木造共同住宅などの進出である。さらに中層のいろいろ
な施設への拡大を目指すことになるだろう。
高齢者向け施設、幼稚園、保育所、病院併用住宅、店舗併用住宅、ショッピン
グセンター、レストラン、各種集会施設など用途的にはどのような需要にも応え
ることができる。RC造などの無機質な空間に比べて、温もりのある木の感触を
求めるニーズが高まっているだけに、期待も大きいものがあるはずだ。
また、ツーバイフォー工法の得意分野であるフレキシビリティーに富んだデザ
イン力を活かすことによって、斬新で親しみのある建物が出現すれば街並みに潤
いを持たせることにもなるだろう。
特に、三角屋根や凹凸のある外観などは、他工法の場合、施工が複雑になりコ
スト高になるなどで敬遠されてきたが、ツーバイフォー工法であれば、何ら問題
なく対応することができる。
何といっても、防火地域に指定されていることが多い商業地域に木造耐火建築 物が建てられることで、街並みがコンクリートジャングルといわれるようなハー ド的なイメージから、ソフトな感覚を呼び戻せるのではないだろうか。
注目のツーバイフォー工法による中層建築物についても、フレキシビリティー に富んだデザイン力を活かすことができる。むしろ中層建築物の方が外観が大き いだけに、街並みに与える影響力は大きくなる。これまでのマンションや商業ビ ルは、四角い箱というイメージを払拭することができなかった。だが、ツーバイ フォー工法であれば戸建て住宅で培ってきた斬新なデザインを中層建築物にも活 かすことができる。
また、RC造などに比べてコストメリットも発揮できるだろう。RC造に比べ て木造は建物の総重量が軽くなる、そのため基礎への負担が少なくなるため、コ ストメリットが出てくる。そのほかにも企業努力でコストを削減できる部位はた くさんある。
アメリカ、カナダの実績をみても、6、7階までの中層建築物であれば、他の
工法で施工するよりもツーバイフォー工法の方がコストメリットがあるからだと、
当地のビルダーは強調している。
北米のレベルと肩を並べるまでに、30年という歳月を要したが、ツーバイフォ
ー工法や木構造の発展に情熱を燃やしてきた関係者にとって、今回の認定取得は
長年の“夢”が達成したといえるだろう。
■混構造によるコストダウン、大規模な中層建築に活路
木造耐火建築物の新しい市場開拓の可能性であるが、ホテルなどは象徴的な建
物となりアピール効果は高いのであるが、現実的には防火地域の狭小敷地におけ
る3階建て住宅が最もニーズが高いだろう。
また、高齢者施設や幼稚園、保育所など特殊建築物は耐火建築物でなければな
らない規制があるため、これまでほとんどがRC造であった。建物的には問題が
あるわけではないが、入居者の感覚からすると温かみがない、画一的な“箱も
の”デザインに魅力がない、といった不満が出てきている。
こうした不満を木造耐火建築物で解消できるという期待は大きく、三角屋根な
どの親しみの持てるデザイン、木を活かしたインテリア空間による温かみの演出
により、特殊建築物ニーズを掘り起こしたいところだ。
商業地域はほとんど防火地域の網が掛けられているため、これまで木造という
選択肢はなかったが、これからは“防火地域の木造”がニッチ市場として成長し
ていく可能性は大きい。そうした市場が形成できるかどうかは、ツーバイフォー
工法を手がける業者の努力しだいということになる。
このほか、もうひとつ注目されるのは、ツーバイフォー工法による耐火構造と
RC造と組み合わせた混構造の建物である。混構造を採用することでより大規模
な中層建築物が可能になるからである。
1、2階をRC造で施工し、その上階をツーバイフォー工法の耐火構造にする
ことで、都市型のマンションやオフィスビルなども建設することができる。この
メリットはすべてRC造で施工する場合に比べて、工期的にもコスト的にも大幅
な削減が期待できる。
木造の中層建築が盛んなアメリカで最もポピュラーなのが、こうした混構造の
建物である。地下から4階までをRC造とし5〜9階をツーバイフォー工法とい
う大規模なマンションやホテルも珍しくない。
混構造が多いのは、まず建築コストが削減できることと、フレキシブルな外観
デザインが容易である、木造の空間に対するニーズが高い、といったことによる。
これからは、日本でもアメリカの中層・大型建築物から学ぶところが多くなるだ
ろう。
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