工務店はいろいろな角度から環境問題に取り組むべきだ。
必ず評価される日が来る
今年は連日の猛暑で体調を崩した人も多かったのではないだろうか。異常気象だと思うのだが、やはり原因は地球温暖化なのだろうか。
地球温暖化は猛暑、冷夏、干ばつ、大洪水などを引き起こすといわれているが、この先どうなってしまうんだろう。
そういえば、昨年はフランスなどヨーロッパ諸国が猛暑に襲われ多数の死者が出たが、今年はそうした話は聞こえてこない。どうやら、異常気象はどんな形で襲って来るか分からないらしい。そこのところが不安である。
こうした状況のせいもあり、いまや環境問題への関心が非常に高まっている。住宅業界においても“環境にやさしい”住まいを前面に出した住宅供給に積極的だ。いまのところ目立つのは、省エネ、長寿命化に焦点を当てた工法や仕様をアピールしている工務店が多いように思う。
省エネは、家庭で消費する「電気代や灯油代が安くなる」といった実利メリットに結びついていることもあり、ユーザーに認知され確実に定着している。だが企業間競争も激しく差別化が図りにくくなっているのも現実だ。
そこで、いろいろな角度から現状の環境問題への取り組みを紹介したい。
◎プロとして生活者にアドバイスする
最近、話題になっているのが環境問題への取り組みを、もう一歩前進させて住宅の生産段階、使用段階、廃棄段階まで含めたLCA(ライフ・サイクル・アセスメント)や環境配慮型経営といった考え方の導入である。
まず、LCAであるが、 LCAとはある製品(サービスも含む)において、その原料の確保から、生産、使用、廃棄に至るまで、環境に対する影響をインプットとアウトプットの両面で評価し数量化する評価手法である。
住宅の場合でみるなら、住宅の生産段階、生活を営む使用段階、寿命がきて取り壊す廃棄段階までを通じて、CO2(二酸化炭素)の排出量を数量化して把握、削減策を検討するということになる。
LCAで評価すると、CO2は住宅の使用段階での排出量が圧倒的に多く、全体の70〜80%を占めるといわれている。そこで、住宅の使用段階でのCO2削減に努力して欲しいというのが、社会から住宅業界に期待されている要請である。
使用段階となれば、そこに住んでいる住民の問題で、供給側が関与するには限界がある、と見限ってはいけない。 もちろん、実際に生活している人が日々の生活の中で使われるエネルギーなどを節減し、CO2抑制の努力は必要である。
だが、当初から省エネ対策を施した住宅を供給すれば、その効果は大きい。また、工務店は住まいに関するプロとして、生活者にいろいろな角度から地球温暖化も含めた環境問題をアドバイスできる立場にある。
社会的な要請として、住宅業界に期待されているのは、まさにそうした点である。たとえば、高気密・高断熱住宅を供給するにしても、単に流行の仕様だから採用するというのではなく、その意義を生活者に詳しく説明することで、社会的な理解度が深まるだろう。
さらに、自然エネルギーの活用を促すなら、二酸化炭素削減効果は高まり、ビジネス的にも付加価値の高いものになる。生活者の方も環境問題に関心を持つ人が増えており、そうした住まいづくりのプロからの提案を歓迎するだろう。
◎「環境格付け」による融資制度
次に、環境配慮型経営についてであるが、これも前向きに考えておいた方が、企業にとってメリットがある。それは、環境問題に対して積極的に取り組んでいる企業姿勢をランク付けしようという動きが活発化しているからだ。
日本政策投資銀行は、世界ではじめて「環境格付け」を利用した融資制度を開始した。「環境配慮型経営促進事業」というもので、地球温暖化や廃棄物など多様な問題に直面する国内企業の環境経営をバックアップするのが目的である。
融資申込み企業の環境経営の進展度合いを評価し、成績の優れた順に「A」「B」「C」との“3段階”でランク付する。その水準に応じて融資の支援を手厚くする仕組みを取り入れている。
同制度の特徴は、@経営全般A事業関連B環境パフォーマンスを柱とするスクリーニング手法を活用する点である。住宅産業の例でみるなら、住宅の全生涯を通じ与える環境負荷を総合的に評価するLCAの視点で研究開発をどの程度進めているかを評価する。環境パフォーマンス関連では、地球温暖化対策や資源有効利用対策などの実行力をチェックする。
支援の流れは、まず申し込み企業に対し、約100(設問数)からなる質問への回答を求める。各評価項目で評点化した結果を加算し、最終的に「200点満点中何点か」をみる。その結果、一定水準以上の成績をおさめた企業が支援対象となる。あわせて、先進的な環境活動を高く評価するため、200点の枠以外に「加点項目」という別枠を設けている。 さらに、合否ラインとなる総得点も明らかにしている。大企業の場合が「120点以上」、中堅・中小企業の場合が「110点以上」である。
ただし、合格ラインをクリアしても、要求する「環境パフォーマンスの最低得点(総得点の内数)」が未達だと選抜からもれる。ただ、温室効果ガスの排出量削減など定量的な実績が過去になくても排出削減意欲の高い中堅・中小は多い。そこで、最低得点が未達でも、今後の改善を約束すれば特別に点数が上積みされる配慮もされる。
今年の4月にスタートしたばかりの制度であるが、すでに80社以上の申込みがきているという。この中に住宅業界からの申込みがあるかどうかは分からないが、まだ具体的に「申込みをした」「融資を受けた」という企業名は聞いていない。
今後ますますユーザーの環境に対する関心が高まるであろうことを考えると、日本政策投資銀行の「環境格付け」で高い評価を得て、環境問題に熱心に取り組んでいるという企業イメージをアピールする価値は十分ある。
◎工務店も「環境報告書」を作成しよう
もうひとつ工務店が視野に入れておかなければならないのが「環境報告書」である。近年、多くの企業が自社の環境保全への取り組みを社会に公表し、その姿勢を理解してもらうとともに、消費者との環境コミュニケーションを図っていくために「環境報告書」を作成している。
「環境報告書」には、その企業の環境問題に関する考え方、取り組み内容、取り組み実績などのほか、将来の目標なども体系的に記載される。 現在、環境報告書を作成し公表しているのは、大手ハウスメーカーの一部である。そこで、積水ハウスの環境報告書を簡単に紹介しておこう。同社の取り組みのなかで、注目したいのが「ゼロエミッションの推進」である。
エミッションとは英語で排出という意味である。産業の製造工程から出るゴミを、別の産業の再生原料として利用する「廃棄物ゼロ」の生産システムを構築していくことがゼロエミッションである。
ゼロエミッション運動はほかの産業では積極的に取り組まれており、その成果がマスコミで報道されることも多く、社会的に高い評価を受けるだけでなく、株価も上がったりする。それに対して、建設業はかなり遅れをとっている。
工場で部材を生産する場合、現場での対応とはまた違った形での環境対策が求められるので、大手ならではの対策が必要になっている。
こうしたなか、積水ハウスでは、「自社で出した廃棄物は何とか自社で活用したい」ということで、茨城県の関東工場に資源循環センターを設置、工場から出る廃棄物のリサイクルに力を入れている。現在、木材を加工する際に出る木粉を廃樹脂と混ぜ合わせた瓦桟を生産している。引き続き、ほかの部材生産の開発も進めていく方針である。
ゼロエミッションへの取り組みに限ったことではないが、とかく環境問題への取り組みには、余分なコストを負担しなければならないというイメージが強いが、決してそのようなことはなく、徹底すれば大幅なコスト削減に結びつき、利益率アップに貢献してくれる。このことは、他産業の先進企業が実証していることでもある。
さて、工務店であるが、工務店も環境報告書を作成して、社会にアピールするべきである。必ずその反応は返ってくる。実は、工務店は住宅供給を通じて、すでに多くの環境対策を実施しているのである。
気密・断熱性能の高い住宅、エネルギー効率の高い住設機器、照明器具の採用。これらはすべて二酸化炭素削減に結びついている。
シックハウス対策やバリアフリー化にも前向きに取り組んでおり、これも住環境の向上に貢献している。また、新築やリフォームで発生する産業廃棄物の適切な処理は環境問題解決策そのものである。
工務店の多くは、日頃の忙しさに追われて、積極的に取り組んでいるにも関わらず、それを第三者に分かるように整理していないのである。
まず第1段階として、自社で現在実施していることを整理して、レポートにするだけで、立派な環境報告書になる。第2段階はさらに向上させる目標を立てて、前回との比較も含めた取り組み結果を報告書にする。
こうして作成した環境報告書は、取引金融機関、資材仕入先、OB客、見込み客に配布する。また、要約したものを建設現場に設置するのも有効だ。必ず環境問題に熱心な工務店と評価される日が来る。
◎いまから“CO2削減住宅”を考えておく
地球温暖化問題に対処するために、わが国は京都議定書で2010年までにCO2(正確には二酸化炭素、メタンなどを含めた温室効果ガス)を6%削減(1990年比)すると公約した。現在どのような状況になっているかというと、CO2の排出量は削減どころか7%以上も増加している。したがって、京都議定書を遵守するにはこの先13%以上の削減が必要となっている。
せっぱ詰まった状況になっているといわざるを得ない。そこで、環境省では2005年の実施に向けて“温暖化対策税”の創設に向けて動き出した。また、増税かよ!という声が聞こえてきそうだ。同省が提示した“温暖化対策税制度案”は、化石燃料の輸入段階または製品出荷段階で低率課税し、その税収をCO2削減のための補助金などの施策に充てるという。
税率は炭素1トン当たり3,400円(ガソリン価格にして2円/リットル相当)とし、年間の税収として約9,500億円を見込んでいる。この“温暖化対策税”で得られた財源で、省エネ、新エネ対策を支援するという。
同省の報告書には、一般家庭を例にCO2排出と温暖化対策税による効果をイメージで紹介している。
▼マイカーを所有している平均的家庭は年間約5,900KgのCO2を排出している。
▼税率3,400円/炭素トンの温暖化対策税を導入した場合、1世帯当たりの税負担額は年間5,500円(月額460円)。電気、ガス、ガソリンなど平均的光熱費の2%に相当する。
▼燃料消費が1/2の低燃料車に置き換えればCO2の約15%削減が可能である。
▼「エアコン、冷蔵庫、テレビをトップランナー製品への代替え」+「照明を白熱灯から電球型蛍光ランプへの切り替え」でCO2排出量の約6%の削減が可能である。
▼3kWの出力の太陽光発電(年間発電量3,000kwh)を設置すれば、CO2の約23%削減が可能である。
――などをあげている。
また、いま注目されている燃料電池など新たな革新的技術の開発・普及も重要であるが、すでに存在している技術だけでも、何らかの施策を導入することで大きな効果が期待できるとしている。
具体的に「民生・運営部門に対して、太陽光発電、太陽熱利用、小型風力発電などの新エネルギー技術の普及。省エネ機能の優れた住宅、省エネ効果の高い床暖房、家庭機器の省エネ技術の導入、バイオエタノールの利用、などが広く普及すれば6%削減の約束も不可能ではない」という。
環境省の意向どおりに温暖化対策税が2005年に創設されるとしたら、住宅業界が積極的に政府に働きかけていかなければならないことは、税収をあてた住宅分野への補助金政策である。補助金制度が実施されることで新築やリフォーム需要の拡大が期待できるからだ。いまから“CO2削減住宅”の開発に力を入れておくべきであろう。
環境問題に向けられた視線と同じ方向に向いていない住宅供給業者は生き残れない時代に入っている。
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