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UPDATE: '05.06.09

「つくばスタイル」で地域と一体になったまちづくり
 〜 いま流行のスローフード、スローライフを取り入れる 〜

◎都市機構「つくばスタイル」を提案

 秋葉原とつくばを結ぶ新しい鉄道「つくばエクスプレス」(略称:TX)が今 年の8月24日に開業する。首都圏最後の大規模プロジェクトいわれる事業である。
 TXは東京・埼玉・千葉・茨城の1都3県にまたがって運行され、秋葉原−つ くばを45分で結ぶ。駅数は20駅で、東京エリア7駅、埼玉エリア2駅、千葉エリ ア5駅、茨城エリア6駅である。

 TXが開業することで沿線の商業施設や住宅開発がにわかに活気づいてきた。 沿線のまちづくりは鉄道整備と一体的に進められてきたため、各駅前を中心にイ ンフラ整備が整い、いよいよ本格的に建物の建設が動きだしたからである。
 この沿線の最大の地主は独立法人都市再生機構で、埼玉、千葉、茨城の6地区 で「つくばエクスプレスタウン」の開発を進めている。なかでも最も大きな開発 がつくば市の葛城地区と萱丸地区である。

 この両地区のまちづくりにあたって都市再生機構では「つくばスタイル」とい う暮らし方の提案をアピールしている。つくばスタイルを一言でいうと「都心か ら45分の粋な田園生活」といえる。
 この地区の自然を活用することで、いま流行のスローフード、スローライフを 取り入れたまちづくりを実現させていこうというのである。

◎スローライフが生活スタイルを変える

 スローフードとはファストフードの対語として登場してきた言葉で、ファスト (速い)からスロー(ゆっくり)を目指そうというものだ。
 このスピード化の時代にあって、お気軽で便利なファストフードが私たちの食 生活のなかにすっかり定着している。しかし、一方でどのような食材が使われて いるのか分からない、伝統的な食文化が荒廃してしまう、と危惧する声があがっ ている。

 特に狂牛病(牛海綿状脳症:BSE)や鶏インフルエンザなど食品にまつわる事 件が起きて以来、誰もが日頃口にする食品の安全に無関心でいられられなくなっ た。また、農薬を使わない、もしくは可能な限り農薬を減らした野菜など食材と 健康に気を使う人も増えている。

 こうした不安な社会情勢を反映して、安全な食を求める消費者が連帯し、有機 農法を実践している生産者を支持し、食のエコロジー活動を展開しよう、という 意味あいもスローフードに含まれている。
 さらに、食だけでなく生活スタイルにまで枠を拡げて、住まいや暮らし方と健 康・安全についても考えようというのがスローライフである。

 つくばスタイルは、こうしたスローフード、スローライフの考えを取り込んだ まちづくりをしていこうというわけだ。
 都市再生機構のパンフレットから、コンセプトの一端を紹介しよう。

 「つくばにはアカマツ、クヌギ、コナラなど里山の雑木林が多くあり、新しい まちの周辺も豊かな緑に彩られています。
 こうした地域の環境資源を将来にわたって守り育てるため、行政はもちろんの こと、大学や研究機関などの専門家や土地の所有者に加え、このまちで新たに暮 らす方々も緑や水の維持管理に参加できる共管理活動のしくみづくりを進めてい ます」。

 「ガーデニングはもちろん、わが家の食卓を彩る野菜づくりにも挑戦したい― ―そこで、農家の指導を受けることができる市民農園や遊休農地での農業体験を はじめ、近くの農地を貸してもらうシステム、広い菜園を設けた大型住宅の企画 を考えています」。

 と、積極的に田園生活の魅力をアピールしている。だが、一方で筑波学園都市 の国際性や情報システム整備なども訴えている。

 「ITを活用した一歩先をいくまちづくりを進めることにより、地域の付加価 値を高め、人や産業の定着・集積を図ることを狙いとしており、現在、豊富な情 報サービスを双方向で享受できるマルチメディア住宅の建設、教育・医療など各 種情報サービスや安全・安心を確保するタウンセキュリティーサービスの提供を 検討している」。

 「年間80件以上の国際会議が開かれ、海外からも大勢の研究者が訪れます。大 学や研究機関と産業界が共同で行う技術開発や情報交換活動も盛んで、TLO (研究成果を企業などに仲介する技術移転機関)によるベンチャー企業の支援・ サポートも活発に行われています。
 こうした動きは、ビジネスチャンスの創造を擁する活力あるまちとなるでしょ う」。

◎寝に帰るベッドタウン時代は終わった

 つくばスタイルは田園生活、マルチメディアな暮らし、知的文化交流を大切に した質の高い生活スタイルを目指している。
 これは、スローフード、スローライフの支持者層と重複する部分も多く、特に、 もうすぐ定年を迎えようとしている団塊の世代にその傾向が強いように思われる。

 一時期、土地価格の下落を背景に、都心回帰現象が騒がれ、郊外の一戸建て住 宅を売って都心のマンションに移り住むのがトレンドであった。それはまず職住 接近で通勤の負担を軽くしたい、教育・文化施設、総合病院などは都心に集積し ているなどが都心回帰を支えていた。

 その傾向はまだ続いているし、都心での生活に憧れを持つ人は少なくないだろ う。しかし、都心ならではの騒音、人混み、車の排気ガス、治安の問題などを嫌 う人もいる。

 つくばスタイルはほどよい都会、自然との調和を前面に出した、新しい暮らし を提案している。これまでの大規模なニュータウン開発は、多摩ニュータウンな どに代表されるが、生活としてのインフラが整備されているだけで、地域との交 流も少なく、寝に帰るだけのまちであった。

 いわゆる、そこに暮らしていてもおもしろくないのである。人間味もなく、地 元のお祭りがあっても団地住民は浮いてしまい参加もしないということがある。
 それでも、寝に帰る場所を確保するためにニュータウンは、ベッドタウンとい われそれなりの支持を得てきたが、社会が成熟してくると不満が出てくるのは当 然である。
 その反省を踏まえて、寝に帰るだけのまちではダメだというのがつくばスタイ ルといえる。

 TXは千葉県の柏市、流山市が沿線になるため、両市とも「研究・教育、農業、 住宅」をコンセプトにしたまちづくりに力を入れている。都市再生機構も2地区 で開発を進めており、つくばスタイルを踏襲した展開をしていく。

 また、柏市を中心としたこの地域は、Jリーグ柏レイソルの本拠地で、TXが 開通すると「柏の葉総合競技場」グンと近くなる。そこで柏市ではTX開通記念 試合を計画しており、地元はもとより近隣のサポーターを呼び込んで活性化を図 ろうとしている。
 これからは、スポーツを活用したまちづくりも重要な要素となりうる。